こんにちは。
【おねーちゃん】5歳8ヶ月(生後6ヶ月で離乳食を始めるも1歳8ヶ月で途中から西原式に移行&最近砂糖なしをゆるっと解禁しはじめました→詳細はこちらの記事で)と【いもーと】1歳1ヶ月(西原式実践中)の二児の母、YOROZUです。
今回は、西原式育児を実践する身にとっては耳の痛いお話です。西原式について都合の良い情報しかお伝えしないというのは全くフェアじゃないと思うので、今回はあえて西原式をすることのリスクや「都合の悪い部分」に触れていこうと思います。
- 離乳食の開始を遅らせても、"食物アレルギーの予防効果があるという科学的根拠はない"
- 皮膚からアレルゲンが侵入することによって食物アレルギーを発症する
- "離乳期早期の鶏卵摂取は鶏卵アレルギー発症を予防することを発見"
- "100%の家庭の子どもの寝具から鶏卵アレルゲンが検出"
- 本当に"離乳食を遅らせても食物アレルギーの予防にはならない"のか
- 栄養不足への懸念
- あとがき
離乳食の開始を遅らせても、"食物アレルギーの予防効果があるという科学的根拠はない"
記憶に新しい方もいらっしゃると思いますが、厚生労働省が2019年3月に「授乳・離乳の支援ガイド」を12年ぶりに改訂しました。
改定された「授乳・離乳の支援ガイド」には、「食物アレルギーの発症を心配して、離乳の開始や特定の食物の摂取開始を遅らせても、食物アレルギーの予防効果があるという科学的根拠はない」(p33)と明記され、生後5、6ヶ月からの離乳食開始が推奨されています。
さらに、改訂前のガイドでは生後7~8か月頃からとされていた卵黄の摂取時期が、今回の改定では離乳初期である生後5~6か月からと前倒しされました。
ガイドの原本はこちら▶︎授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版) (新規タブが開きます)
西原式育児を実践中、または実践しようと考えている人の中には、食物アレルギーの予防を目的に離乳食の開始を遅らせようという考えの方が大半なのではないかなと思いますが、見事にこのねらいとは真逆の内容へと改定されました。
西原式をする身としては、卵黄の摂取開始が改定前の"生後7~8か月頃"ですらまだ早いのでは?と思ってしまうのに、なんと、"生後5〜6ヶ月"に前倒しされたとは驚きです。
皮膚からアレルゲンが侵入することによって食物アレルギーを発症する
なるべく早く食べ始めて慣れさせた方が食物アレルギーの予防によい、というのが昨今の離乳食指導の方針になっているわけですが、その背景には、近年解明されてきた食物アレルギーを発症するまでのメカニズムが深く関わっています。
それでは、食物アレルギーを発症するまでのメカニズムを簡単にみていきましょう。
・アレルギー症状は通常、アレルギー反応を起こす物質(アレルゲン)が2度目に体の中に入ると発症する。
(例:蜂に刺された場合、1度目はアレルギー症状は出ないが、そのときに抗体が体内で作られる→2度目に刺された時に抗体が反応してアナフィラキシーショックなどの重篤なアレルギー症状を起こす)
・赤ちゃんの場合、離乳食で初めて食べたものでもアレルギー症状が出るのは、食べるよりも前に体内にアレルゲンが侵入して抗体が作られてしまっているため。
・食物アレルギーの患者は、アトピー性皮膚炎を発症していることが圧倒的に多い。
・乳児期にアトピー性皮膚炎で肌の防御機能が破綻してしまっていると、そこから微量ながらアレルゲンが皮膚に侵入して免疫反応がアレルギーを発症しやすい方向に傾き、「抗体」が作られる。これを経皮感作という。
・一方で、口からアレルゲンが入ると、実はアレルギーは抑制される方向に働く。これを経口免疫寛容という。(※1)
口から摂取する前に皮膚からアレルゲンが侵入してしまうことが食物アレルギーを発症する原因であるので、皮膚からアレルゲンが侵入する前に口から摂取した方がよかろう、という以上のような考えによって、昨今の早期の離乳食開始が後押しされているわけですね。
ちなみにですが、5年前におねーちゃんを産んだ病院でも、皮膚からアレルゲンが侵入することがアレルギーの原因になるため、食物由来成分の入った保湿剤やオイルの使用は控えるようにと当時指導を受けました。例えそれがオーガニックだと謳っているもので一見して安全そうに思えても、食物由来成分を含むものは推奨できず、一見肌によくなさそうな石油由来の鉱物油や軟膏の方がアレルギー予防の点ではよいとのことでした。実は、おねーちゃんが産まれた病院というのが、これからご紹介する研究を発表した「国立成育医療研究センター」なのであります。
"離乳期早期の鶏卵摂取は鶏卵アレルギー発症を予防することを発見"
これは、2016年に国立成育医療研究センターによって発表された食物アレルギーに関する研究内容です。
▶離乳期早期の鶏卵摂取は鶏卵アレルギー発症を予防することを発見 | 国立成育医療研究センター (新規タブが開きます)
この研究により、生後6ヶ月より固ゆで卵を与えたグループは、与えなかったグループに比べ、1歳時の鶏卵アレルギーの発症率(%)が約8割減少したことが実証されました。
研究の背景
・ピーナッツバターを大量に消費する米国、英国の家庭では子供のピーナッツアレルギーの発症が多い
・そのような家庭では寝室中のピーナッツ抗原濃度はダニ抗原濃度を遙かに上回る
・乳児期からピーナッツを食べさせる習慣のある地域(イスラエル)の方が、離乳期にピーナッツを食べさせない地域(英米)に比べピーナッツアレルギーが少ない
・これらの疫学調査により、「離乳早期にアレルギーをおこしやすい食品を食べさせると食物アレルギーを予防できるかもしれない」という仮説が提示された
・ピーナッツ製品を乳児期から食べさせる試験により、ピーナッツの離乳期早期摂取の有効性が確認された
「鶏卵の離乳期の早期摂取は鶏卵アレルギーの発症を予防する」という結論
同センターによる研究や他研究者の研究成果により、「鶏卵の離乳期の早期摂取は鶏卵アレルギーの発症を予防する」と結論づけられました。
それ以前にもピーナッツの離乳期早期摂取の有効性が確認されていたことで、離乳食での鶏卵の早期摂取の流れが一気に加速されました。
"100%の家庭の子どもの寝具から鶏卵アレルゲンが検出"
さらに、2019年3月に発表された国立成育医療研究センターによる研究では、子どもの寝具の埃から鶏卵アレルゲンの量を調べたところ、100%の家庭の子どもの寝具から鶏卵アレルゲンが検出され、それら全ての家庭でダニアレルゲン量よりも高濃度で検出されたことがわかりました。
▶︎100%の家庭の子どもの寝具から鶏卵アレルゲンが検出 | 国立成育医療研究センター(新規タブが開きます)
以下に引用させていただきますと、、、
鶏卵を食べたことがない湿疹のある乳児は離乳食を開始する前から鶏卵に対するIgE抗体を作っていることが一般的に認められており、湿疹によりバリア機能が低下した皮膚から環境中の鶏卵アレルゲンが入ってきて、経皮感作(IgE抗体を作る)を引き起こし、鶏卵アレルギーの発症をしていると考えられています。経皮感作は食物アレルギーの発症原因として重要視されています。
参加した全ての家庭の寝具から鶏卵のアレルゲンが検出されているので、皮膚からのアレルゲンの侵入を防ぐのは難しそうです。だから、皮膚から入るよりも前に、早くから卵を食べさせましょうねっ。という早期離乳食での鶏卵摂取を念押しする研究結果となりました。なるほどなるほど、ますます離乳食を遅らせるのはまずいのかなという雰囲気になってきましたね。
本当に"離乳食を遅らせても食物アレルギーの予防にはならない"のか
さて。食物アレルギーの発症を予防するためにも早期の離乳食開始が望ましいという見解や研究結果等をこれまでご紹介してまいりました。
ここまで読んで、「え?!じゃあ、離乳食を遅らせる西原式なんてしていたら逆にアレルギーになりそうだからやめた方がいいかも!」と思われそうですよね。
でも、それでも私が西原式を実践するにはワケがあります。ここからは、医療関係者でも研究員でもなんでもないただの一母親である私なりの解釈により反論してまいります。笑
離乳食を"遅らせるレベル"が違う
西原式では、離乳食を遅らせるレベルが違います。数ヶ月遅らせるなんていう甘っちょろいレベルではなく、腸の成長度合いに合わせて、通常よりも年単位で遅いスケジュール間のもと焦らずに離乳食を進めていきます。
【西原式離乳食スケジュール】(※2)
・1歳〜1歳半から、純白米のおも湯
・1歳半頃から、にんじんやさつまいも、じゃがいも、大根、かぶなどの根菜類
・2歳頃から、タンパク質もお豆腐などから少しずつ
・2歳〜2歳半頃からの動物性タンパクは、白身魚、鳥のささみ(鳥類)が適している
・牛肉や豚肉は、ヒトと同じ哺乳類のため控える
と、このような進め方になっています。
(あくまで目安です。ご自身のお子さんの成長に合わせて進めましょう。)
先出の国立成育医療研究センターによる2016年の食物アレルギーに関する研究では、"生後6ヶ月より固ゆで卵を与えたグループは、与えなかったグループに比べ、1歳時の鶏卵アレルギーの発症率(%)が約8割減少したことが実証された"わけですが、この1歳時というのがよくよく考えてみると私にとっては疑問ポイントでした。
そもそも、西原式の場合、内臓の発達度合いから卵の摂取は3歳以降(5〜6歳以降であればなお安全)が望ましいと考えられます。つまり、3歳までは卵を摂取しないので、「生後5〜6ヶ月から」と推奨されている鶏卵の摂取をたかだか数ヶ月遅らせたくらいの研究結果で1歳時でのアレルギーの有無を引き合いに出されるのは、非常にナンセンスです。西原式では1歳時では離乳食すら始めていないし、3歳まではそもそも卵を摂取しませんよ、という話なんです。
是非、3歳まで卵の摂取を遅らせた場合の研究もしていただいて、早期離乳食で鶏卵を摂取した場合と3歳になってから摂取した場合とで比較をした上で本当に早期の鶏卵摂取が望ましいのかを改めて提示していただきたいなと思いました。
事実、赤ちゃんに多い卵・牛乳・小麦といった食物アレルギーは、7割くらいの患者は放っておけば自然に食べられるようになっていきます。これは、腸が成熟すると免疫システムも改善して自然にアレルギーが起きなくなってくるためではないかと考えられているためです。(※1)
無理やり早く与えなくたって、腸の成熟を待ってあげてから腸の成長に見合った食材を与えていけばいいのでは?と思ってしまいます。
早期離乳食がアトピーの原因を招く
西原先生によれば、赤ちゃんがアトピー性皮膚炎になる原因の一つにこのようなことをあげています。
赤ちゃんの腸は未完成なので、ビフィズス菌のみの場合には問題はないのですが、赤ちゃんにたんぱく質を与えると腸に悪玉菌がすみつき、これがそのまま直接腸壁を通り抜けて白血球に取り込まれて血液の中に入ってしまいます。そして皮下組織で白血球がバイ菌をばらまいて、皮下組織の細胞群に細胞内感染症を起こします。これがアトピー性皮膚炎です。(※3)
先ほど、食物アレルギーを起こすメカニズムのお話の部分で、アトピー性皮膚炎を起こしているとアレルゲンが皮膚から侵入しやすいということをお伝えしています。だから皮膚から入る前に早期に口からの摂取(早期離乳食)を始めることがアレルギー発症を防ぐ、とのお話でしたね。しかし、早期にたんぱく質を与えることこそが実はアトピー性皮膚炎を起こす原因になってしまっていると考えると、これは実に本末転倒な話です。100%の家庭の寝具から鶏卵のアレルゲンが検出されているならば、皮膚からのアレルゲン侵入を防ぐことはかなり難しいといえるので、尚更アトピー性皮膚炎を起こさせないように、腸が未完成なうちから離乳食を急いで腸に負担をかけるべきではないはずだなと私は思うのです。
早期離乳食が口呼吸の原因になる
西原先生によると、"小児喘息、風邪、肺炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、嗅覚・味覚の麻痺、中耳炎、川崎病、慢性皮膚病、膀胱炎、小児リウマチ、白血病、悪性リンパ腫などは、常習的な口呼吸が一因"(※3)であり、「口呼吸は万病の元」であるそうです。
赤ちゃんが口呼吸になる原因のひとつとしても、早期の離乳食開始によって丸呑みを覚えてしまうことがあげられています。
動物学的にいうと、4歳ぐらいまでは母乳のみでかまわない
ヒト以外の霊長類を引き合いに出してみると、霊長類の中でも遺伝的に最もヒトに近縁な種であるチンパンジーの赤ちゃんの離乳時期は3歳前後(※4)であるし、ゴリラの赤ちゃんの離乳時期も3歳から4歳(※5)です。
チンパンジーは、3歳前後に第一大臼歯が生え始めて、それまで消化の難しかった葉がたくさん食べられるようになって離乳します。ヒトの場合、第一大臼歯が生え始めるのは5〜6歳なので、チンパンジーはヒトの倍の速さで成長すると考えられます。
これを前提に考えると、ヒトだって動物学的には離乳は5〜6歳でもいいと捉えられます。もちろん、ヒトの子はあくまでヒトの子。我が子をチンパンジーの赤ちゃんのように育てようとは到底考えてはいませんが、ヒトが火を使うことで食材を柔らかくする術を得たということを差し引いても、0歳のうちから急いでご飯を食べさせ始める必要もないように思えるのですが、いかがでしょうか。
栄養不足への懸念
それでも、「生後5〜6ヶ月から離乳食をしないと栄養不足になるのでは?」という心配から西原式に踏み出せないお母さんも多くいらっしゃると思います。しかし、上記のように動物学的にみれば離乳は5〜6歳であることからしても、1歳になるのを待ってから離乳食を始めるのだって十分に「早い」とも思えます。
ちなみにですが、この第一大臼歯が生え始める5〜6歳を西原式では「幼児として完成」する時期だとしています。この5〜6歳を期に食物アレルギーが自然と改善させることが多いことも、見事に辻褄が合います。
鉄分不足については下記にて西原研究所の文言から引用させていただきます。
ずっと母乳のみだと、赤ちゃんが貯えた鉄分が不足するという理由から鉄分補強の人工乳や離乳食を与える必要があると一般には言われています。たしかに、鉄はヒトの体の中でわずかな量しか必要ありませんが、なくてはならないものです。体の中の鉄分の多くは赤血球の中に含まれていて、ヒトの赤血球は老化して分解されます。しかし、分解された鉄分は新しく生まれた赤血球にそのまま利用されますし、その他の鉄分の多くも再利用されますから、体内の鉄分はリサイクルされて使われそれほど多くを補給する必要はありません。
さらに、乳児初期に多めの鉄分を与えることは、母乳中に含まれるラクトフェリンの抗菌活性を阻害し体の抵抗力を弱める危険さえあり、鉄分は与えればいいというものではないのです。
また、鉄分補給のため牛乳を与えるのが良いといわれていますが、赤ちゃんに生の牛乳を与えると、含まれている鉄分が少ないだけでなく、牛乳が腸管を刺激して体内の鉄分は少しずつ減ってゆきます。この習慣が続くと、相当量の鉄分がなくなってしまいますから、むしろ牛乳で鉄不足になり、顔色まで悪くなることさえあるのです。(※2)
あとがき
西原式にとって「都合の悪い部分」にフォーカスしておきながら、最終的には西原式をごり押しする内容となりました。笑
私にとっては西原式が理にかなっているように思えるので西原式を実践しています。でも、どんな風に子育てをしていくのかを最終的に決めるのは、結局のところ、お父さんお母さん自身です。
アレルギーに関しては様々な見解があるし、情報もたくさんあります。さまざまな検索を経て私の記事にまでたどり着いてここまでお読みくださったということは、ご自身のお子さまにとって何がいいのかを本気で調べて本気で考えていらっしゃるお父さんお母さんなのだと思います。情報がありすぎてしまうのが現代の子育ての悩みの種の一つにもなっているように思いますが、是非、いまいちどそれらの情報の鮮度や信憑性も見極めた上で、ご自身にとって納得のいく選択をしていただければなと思います。
毎度ながーい記事に最後までお付き合いいただきありがとうございました。
(※1)参照元:食物アレルギーをむやみに怖がらないで | DRP(新規タブが開きます)
(※2)参照元:http://nishihara-world.jp/2015wp/baby/baby04/(新規タブが開きます)
(※3)参照元:http://nishihara-world.jp/2015wp/baby/01_ikuji/(新規タブが開きます)
(※4)参照元:チンパンジーは「三にして立つ?」- 行動研究から示唆されるチンパンジーの栄養的自立の時期 | academist Journal(新規タブが開きます)
(※5)参照元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/advpub/0/advpub_66.1.4/_pdf(新規タブが開きます)